ワンダー オブ アーバン・リバー 帷子川横浜西口エリア生物調査レポート①「幸川 浮き桟橋 編」

ワンダー オブ アーバン・リバー 帷子川横浜西口エリア生物調査レポート①「幸川 浮き桟橋 編」
都市河川だからこその「未知の魅力」を求めて
KOKOPELLI+
寺田浩之

都市河川の水辺の生物は意外と貧弱ではない!?

都市を流れる河川には、一般的に生物が生息する環境として適さない事が多く、生物層が貧弱であると思われがちです。しかし、実際に調査をしてみると意外な生物との出会いにより驚かされる事が多々あります。

今回は横浜西口の幸川(帷子川の分流)の南幸橋付近にある浮桟橋(ポンツーン)での生物調査の結果を報告します。

ここは、横浜駅西口から徒歩1分ほどのところにあり、「ムービル」や「ビブレ」をはじめ「ビッグカメラ」や「多くの店が集まる飲食街」へ向かう人たちが絶えず通行する非常に人通りの多い場所です。

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橋から水面を覗くと川の色は緑色で川に浮かぶゴミなどが目に入り、お世辞にも生き物が棲みやすいとは考えにくい場所です。

しかし、今回の調査では、驚くような結果が待っていました。やはり、都市河川の水辺の生物層は面白い!そんな意外な発見がたくさんありました。

 

調査を行なったのは2016年3月中旬。少々春らしさは感じられるようにはなってきたものの、水温は11℃と水中はまだ冬。一年で最も生物が少ない時期です。

放流によるものと思われる巨大な鯉が橋から通行人がエサを投げ入れてはくれないかとたくさん集まってはいたものの、その他の生物は目視では確認できません。

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そんな中、ポンツーンに降りて、生物調査を開始します。

 

 

予想もしていなかった魚が出現

今回の採集方法はタモ網と投網。まずは、タモ網で採集を開始します。ポンツーンに降りて護岸に目をやると、そこにはカキがびっしり。護岸の地肌がみえなくなるほど大量のカキが活着しています。その間にはコウロエンカワヒバリガイやイガイの仲間が貼り付き、平坦なはずの護岸に立体構造が形成されていました。

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このカキの殻の周辺を中心にタモ網で採集すると1回目から生物が入りました。スジエビモドキです。河口部でよく見られるエビで、それほど大きくならない透明の体をしたエビです。エビくらいは採れるかな・・・とは思っていたものの幸先よく生物が採集できて安心しました。
このカキの周辺を狙うと次々に生物が網に入ります。ヒナハゼやチチブにケフサイソガニなど、カキ殻をすみかにしている生き物たちです。
ヒナハゼは小型のハゼでコロコロしていてとても愛嬌のあるハゼです。

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カキ殻の中に棲む習性があります。
チチブは10センチほどになるハゼで、ダボハゼとも呼ばれます。良く似たヌマチチブととても良く似ていて、どちらもこの川ではたくさん見られます。
ケフサイソガニは小型のカニで名前の通り、オスのハサミに毛のようなフサフサがついています。

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このフサフサはメスにはありません。
予想よりも随分と生物がたくさん採集できて満足していていると、なんとトサカギンポまで姿を見せました。トサカギンポは東京湾ではカキ殻の周辺でたまに見られる魚ですが、今回のような環境では珍しい存在です。

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まさかここで出会えるとは思わなかったので、これには本当に驚きました。

続いて、遊泳魚の生息を確認するために投網にて採集を試みます。さすがに人通りが多い場所。投網を投げるごとに見物人が集まってきました。

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水深があり、なかなか投網には魚が入らないものの、5回目にやっとボラの幼魚が入りました。

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ボラも成長すると80センチ近くなる大型の魚ですが、この時期の幼魚は小さく可愛らしい姿を見せてくれます。銀色にメタリックに輝く特徴的なボディはこの時期特有です。

カキ殻が都会のオアシスを形成していた

今回の調査では、結果的に予想を上回る種類の生物を採集することができました。これは、前述の通りカキ殻によって、護岸に立体構造が形成できたことの効果が大きかったように感じます。カキ殻は魚やエビ、カニ類のすみかとなっていて、実際カキ殻の中に隠れている状態を見ることもできました。

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また、カキの周辺には、ヨコエビやゴカイの仲間などの小さな生物も集まってくるため餌場としても機能します。

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こうした効果によって、予想以上に多くの生物が集まっていたのだと推測できます。また、ポンツーンがあることによって、それが障害物となり、より生物が集まりやすい環境になっているのも事実です。
これらの要素により、都市河川のオアシスのような環境が形成されていたのです。この結果は、全く予測していない意外なものでした。今回のことから、やはり都市河川には、「未知なる魅力」があること。そして、それを見つけ出すには先入観を捨て、まずは実際に調査をしてみる必要がある事を再認識しました。みなさんが毎日目にしている街の水辺も、調査をしてみると実はまだ知られていない生物のオアシスが発見できるかもしれませんよ。

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寺田浩之
KOKOPELLI+(ココペリプラス)代表 水辺総研客員研究員
子どもたちを対象とした環境調査、環境教育を行う。魚類、水棲生物調査、環境教育、環境展示を専門とする。横浜西口夏祭りでは、帷子川ミニ水族館を実施。ミズベリング横浜西口プロジェクトにて、帷子川の環境生物調査を行なっている。